クリストファー・ノーラン『ダンケルク』

ありがとうノーラン。こういうのが観たかった。

人々が、勝ち負けだけでなく現在の状況すら訳も分からず右往左往させられ、生き死にを決めるのは強さでも決断力でもなく「運」。そういう異常な極限状態をすぐ近くで見せてもらっている。そんな感覚。
同じノーランでも、『インターステラ』などとは全く質の異なる作品。
なんというか、「物語」はあるんだけど「脚本」がないというか。

上映時間150分越えは当たり前のノーラン作品ですが、今作はびっくりの106分。見終わってみると、あの調子で180分やられたら耐えられないところだった。

この映画には明確な主人公がいません。いや、いるにはいますが、キャラクターの人物造形や背景の説明は一切ありません。

実際にあった第二次大戦、ダンケルク海岸からの英仏軍撤退。でもドイツ兵は全く画面に出てこない。だから彼方を埋め尽くす敵勢なんて絵面は一度もない。

ストーリーそのものは明確。ただちょっとひねってある。

3つのシーンが並行して「防波堤:1週間」「海:1日」「空:1時間」と表示され、最初は翻訳を間違えてるのか?と思ってたらそういうことじゃなかった。過去の『メメント』や『インセプション』などど同様、ノーランは時間経過を精密に収束させるギミックが好きですね。

あとは箇条書きで。
◎トム・ハーディー。おまえやったんか!
◎ハンス・ツィマー。いくらなんでもうるさい!でもこれは映画館で体験すべき。
◎ヒーローを描くのはある意味簡単。本作で描かれるのは全て「名も無き人々」。ノーランは凄い。
◎泣いた。ノーランありがとう。ありがとうノーラン。