役に立たないが最高に面白い「トルコ料理」

妻がトルコ料理をやろうと図書館で検索し、名前だけで「ワールドクッキング・トルコ料理」という本を借りてきた。

ところが、いきなり冒頭から15ページにわたってトルコ民族の歴史について解説が始まり、続いて子ヤギの解体手順を懇切丁寧に4ページにわたってグラビアで紹介するなどの遊牧生活のレポート。
さらにヒゲ男だらけのバザールの様子などが延々続き、ちっとも具体的な料理の話をしない(笑)。

実に丁寧な写真解説つきで、完全に趣味に走った編集が頼もしい良書である。

「料理」というよりは「料理文化」の説明ばかり

全143ページの本なのに、肝心の調理法は「あ、忘れてた」とばかりに129ページめからやっと始まる。

「役に立たん! 面白かったけど!」と妻が文句言ってました。
レシピにしようと思わなければ実に楽しめる本。 

すっごく面白いけど、こんなことをできる現代日本人が何人いるのか

柴田書店、1992年初版。もっと古い感じの編集だなあ。

『兼高かおる世界の旅』的な。
兼高「ここはお肉の専門街でございますの。血の臭いがすごいんですのよ」
芥川「うわ〜、こちらはまさか、内臓の専門店?」
兼高「そのまさかですのよ」
みたいな、兼高さんと芥川さんのやりとりが聞こえてきそうな、実に良い感じ。

だから料理の説明をしろって!(笑)

本書はそのタイトル通り、シリーズ物ではあるようだが、あとはヨーロッパ諸国ばかりだった。
売れなかったのかなあ。
モロッコ編とかアフガン編とか、出してくれたら超読みたいのに。

「作りたくないけど売れそうだから作った」中途半端な薄味の本が氾濫した結果、良い意味でエクストリームな書き手や企画が埋もれちゃってるのかもしれない。