画太郎先生ありがとう

私が尊敬する漫画家のひとりが漫☆画太郎先生なのでありますが、先生の第1回ジャンプGAGキングを受賞した後に、季刊ジャンプに掲載された読み切り作品が「エスカレーション」です。
高校3年生の時に描いた作品らしい。
私は立ち読みでこれを見て、あまりにも笑ったと同時に衝撃も受け、思わずこの「エスカレーション」だけを切り外して保存してしまいました。
ですので、単行本としては「画太郎先生ありがとう いつも面白い漫画を描いてくれて」に載ってるんですが、以下はあえて雑誌掲載時のものからの引用です。

季刊ジャンプというのは半分くらいが人気作家のスピンアウト作品やベテラン作家のリハビリ作品(?)だったりして、残り半分が新人読み切りという構成です(現在はどうだか知らない)。
ただ新人漫画家の読み切りというのはおおよそ、まだ編集に鍛えられてる最中であるため、どうしても話が小さくまとまろうとする傾向があります。
なんとか物語として成立させました、という感じで。
何度も何度もネームを書き直した結果なんだろうなあと、その苦労の跡がしのばれてしまうわけです。
ところがこの「エスカレーション」は違います。全然小さくまとまらない。
どのくらいまとまらないかと言うと、

こんな感じで始まった漫画が、

こんな風にしてエンディングを迎えます。
実際に読んでみないとわけがわかりません。予想不可能。
しかしまあ、とにかく笑える作品です。それだけは間違いない。
ギャグ漫画というのは非常に時流に影響されるジャンルですので、いつ読んでも笑える作品というのは貴重です。
本当、天才ですよ。この人は。
また漫☆画太郎先生というのは、キャラがいつも鼻水やヨダレを垂らしているため「汚い絵柄」というイメージがあると思います。
全くその通りです。
しかし本気を出すと実際は画力が高いというのが、これまた先生のいいところ。
「エスカレーション」の中でも、1コマだけこういうの(↓)が入ってます。

突然「え?こんなテク持ってたの?」という細かいトーンワークです。
「珍遊記」で「ドラゴンボール」を、「珍入社員金太郎」で「サラリーマン金太郎」をまるパクリしましたが(どちらも死ぬほど笑った)、ああいうのもそんじょそこらの画力ではできない芸当です。
最高の才能をもった作家が送り出す、最低の作品群。
単行本を読みおわってパタンと閉じたとき、心に浮かんだ言葉がそのまま表紙に書いてあるんでびびります。
「画太郎先生ありがとう、いつもおもしろい漫画を描いてくれて」と。

漫☆画太郎 (4)
プロトタイプな漫画
先生ありがとうございます!
現代のピカソ。
20世紀を総括するにふさわしい本