2日連続時代劇

一昨日、銀座のTOHOシネマで『十三人の刺客』を観てきました。
三池崇史監督で、出演は役所広司、稲垣吾郎、山田孝之、松方弘樹、沢村一樹、六角精児、波岡一喜、伊原剛志、古田新太、伊勢谷友介、市村正親など。
2時間半という長い尺で、ずっと泥だらけの男だらけ。
古い名作のリメイクということですが、元が1963年ということで観てません。
悪役の稲垣吾郎がとんでもない悪さで、これがもうすんばらしい。
「善悪と割り切れないのが人間なのだ」とか「悪役にも色々事情がある」とか、そういうまどろっこしいしたり顔で作ったようなキャラ設定はないです。
悪い奴は悪い、だから殺して良し!
この気持ちよさ。
ただ上記の「まどろっこしさ」を好きな向きにも、ちゃんと稲垣側近である市村正親が用意されております。
でも最近思うのですが、私はどうも「日本男児の美学」というのがだんだん肌に合わなくなってきてる気がするのです。
この映画でも、山田孝之が追いすがる妻(吹石一恵)にピシャリと「すぐに帰る。帰らなかったら……盆に帰ってくる」みたいなことを言って多くを語らず出て行くわけです。
こういうのが格好いい、というのが男の美学であるのですが、それなりに男としてカッコイイねと思いつつも、「もうちょっと説明してやってもいいじゃねえか。減るもんじゃなし」とも思ってしまうわけですね。
言っても詮無いこと、というわけでもないんですよ。
刺客として旅立つ以上は、その先に円満解決は待っとらんわけで、家族は事と次第によってはすぐにその場を逃げ出さにゃならんかもしれんし。
後半はずっと戦闘シーンで、チャンチャンバラバラ、チャンバラバラ、チャンチャンバラバラ、チャンバラバラ、と50分くらい戦いまくります。
13人は鬼神のごとくというよりチート状態の強さで、繰り出す攻撃は全てクリティカルヒット、受ける攻撃は全て間一髪ノーダメージ。
爆薬も大放出で、ドッカンドッカンいく。
でもここはあえて言いますが、この戦闘が、長い。長すぎる。
その中で特にイキイキしてたのが松方弘樹、いちいち見栄を切ります。
それでもって斬って殴って焼いてどついて刻んで死人が山積みになる。ところが血しぶきあげてる割には、刀がずっとピカピカしてる。
リアルなんだかチャンバラなんだかわからない。でもまあ面白かったからいいや。

次は昨日、神戸の国際会館で観たのが『大奥』。映画の日だから1000円。
こちらは泥成分0%の男だらけ映画です。
よしながふみ原作のマンガを映画化。「男女逆転」した江戸時代、柴咲コウが将軍吉宗であり、美男3000人の大奥を舞台にした物語です。
男ばっかり死ぬという状況で将軍が女でいいんだったら、そもそも大奥必要ないのでは……と思うが、そういう野暮なことは言わない。
この作品、原作コミック1巻に非常に忠実。
大ヒットしてる漫画というのは既に客に受け入れられたプロット、台詞、テーマ、構図を持ってるわけで、長い巻数をまとめるのでないなら、これを脚本家・演出家がいじる必要は全くありません。
あとはどれだけしっかり落ち着いた映像に落とし込めるかであって、その辺はよくやってると思いました。
でもまあ、映画でやらんでも、テレビドラマでよくね?とも思いますが。
愛読者その1としては、水野が二宮和也というのはちょっと違和感がある。
背が低すぎるんだよね。お信(堀北真希)を抱きしめても、背がほぼ同じ。
演技力もルックスも問題ないだけに惜しい。
そういえば水野がお信をおんぶして石階段を登るシーンがあるんですけど、ずっと背中しか見せない。
おんぶというのは正面から見ていいものであって、負われる女性としては後ろからは見られたくないポーズであるはず。
さては二宮、おんぶできなかった?
まあいいや。
で、「大奥究極の美男」である松島こと玉木宏は本当に美男子。佐々木蔵之介の藤波、阿部サダヲの杉下も良し。
いちばん「おおっ」と思ったのは和久井映見演じる加納久通。
ちょっとふっくらした和久井が、キャラ名を言われなくても「あっ、久通だ」と判るくらいぴったり合ってました。
あと柴咲コウの登場シーン。白馬に乗って疾走。さらに町人スタイルで町をお忍び歩き。
やっぱ女になっても暴れん坊将軍は健在だ。吉宗はこうでなくてはな。
ただ映画館がレディーズデーでもないのに女だらけ。
男は自分を含めて館内に3名しかいませんでした。