ウルティマ5の思い出

Ultima V -Warriors of Destiny-(オリジン社)X68000版

■初めに
自分がこれまでの人生で最もハマったRPG。
RPGで何が好きといって、町の人との会話が好きだ。
ゲーム内世界の人々の日常生活を想像できるような会話が一番よい。
そういう意味では、ファイナルファンタジーよりドラゴンクエストが好きなのであって、ファイナルファンタジーなら9が一番いい。

■ゲームの紹介
とにかく面倒くさいゲーム。
何が面倒かと言うと、まずややこしい倫理観。
このゲームの肝は「何が正義で、何が悪なのか?」という点だ。
前作は主人公が聖者アバタールを目指し、徳を積むという内容だった。
今回は「では、徳とは何なのか」という領域に入る。
前作で徳を規定していた世界の王ロード・ブリティッシュは行方不明となり、地下世界に幽閉されている。
代わって王座についたのが、ロード・ブラックソーン。彼は徳の基準を歪めてしまう。

悪魔と邪悪なピエロを従えたロード・ブラックソーン

8つの徳がゆがめられた結果

  • 慈悲:困った人を助けなければならない。さもなくば、同じ苦しみをなめることになる。
  • 正義:罪を犯したら、自白をして罰を受けなければならない。さもなくば、一生牢屋に入ることになる。
  • 名誉:名誉が傷ついたら、命を絶て。
  • 謙譲:己の優れたところに対して謙虚であれ。さもなくばそれに対する怒りに苦しめ。
  • 献身:収入の半分を、恵まれない人に寄付しなければならない。さもなくば、収入を差し押える。
  • 勇敢:挑戦されたら、死ぬまで戦わなければならない。さもなくば、臆病者として去れ。
  • 誠実:嘘をついてはいけない。さもなければ、舌を抜く。
  • 崇高:徳の教えを高めねばならない。さもなくば、異端者として死ね。

という無茶苦茶な世界になった。
つまり体制側に気に入られて情報を得ようとしたりすると、こういうおかしな倫理に従わざるをえない場面が出てくるわけだ。
判断を間違えると衛兵にとっつかまって投獄されてしまう。

町の入口に掲げられた無茶な法律

ゲームの目指すゴールは、大目的として「地下世界で行方不明になったロード・ブリティッシュを救出する」があり、それに至る小目的として、

  • 8つの徳を示すマントラをそれぞれの神殿で唱える。
  • ロード・ブリティッシュの3アイテム(王冠、杖、アミュレット)を集める。
  • ブラックソーンによって追放された評議会メンバー8人を探し出す。
  • メンバーから聞き出した「力の言葉」を使い、8つの洞窟の封印を解く。
  • 地下世界に眠る「偽り」「臆病」「憎しみ」の破片を探し出す。
  • ブラックソーンを操る3人のシャドーロードの本名を探し出す。
  • 「真実」「勇気」「愛」の神殿で、シャドーロードを封印する。

がある。
これだけでも面倒なのだが、さらに面倒なのがゲームシステム。
会話するのに、いちいち話を引き出す単語を入力せねばならない。
最初は名前や仕事を聞くところから始まり、相手のしゃべった内容から重要単語を抜き出す。
「僕は冒険家だ!」とか言われたら、「冒険」とかしゃべると返事がくる。

会話の糸口は全て自分で見つけるしかない

ある町で誰それが言った単語も覚えておき、別の町でそれを聞かなくては重要な情報が出てこないなんてしょっちゅう。

必須アイテムの「魔法の絨毯」というものがあるが、その情報を得るには以下の手順を踏む。

1,サーパンツ・ホールドのムッシュルーベ氏とフェンシングについて会話すると、魔法の絨毯の話になる。「私はそれをバンダイという魔術師に売ったんだ」
2,ポーズ村のバンダイ氏「わしは、有名なしゃべる馬、スミスを探しているのだ!」
3,ノース・ブリタニーのカート君と馬の話をする。「トレアンナが喜んで馬の話をしてくれるよ、特にバロリアン種の話はね!」
4,ロード・ブリティッシュ城のトレアンナ嬢にバロリアン種の話をすると、スミスの話になる。「森の奥深くにあるイオロの小屋の納屋に居るって聞いたわ!」
5,小屋に行って馬のスミスと、干し草のことなどを話す。
6,バンダイ氏と再び会話。「ついにやってくれたな!」
  →これで魔法の絨毯のありかを教えてもらえる。

私は全会話のデータベースを作りながらプレイした(そうせざるを得ない)。
移動以外のコマンドは、全て頭文字で入力する。

B(Board:乗船する)
G(Get:取る)
I(Ignite Torch:たいまつに点火する)
J(Jimmy:解錠)
K(Klimb:階段などの登降)
L(Look:見る)
N(New Order:パーティーの並べ替え)
T(Talk:会話する)

といった感じ。ただし慣れると一般的なコマンド選択方式より早い。

山脈奥深くへ「Klimb」すると発見できる砦

町の人々が、本当に生活している。

朝起きてダイニングやレストランで食事して、働きに出る(畑を耕す、店を出す、職場に入るなど)。
お昼は帰宅したりレストランに寄ったりで食事して、午後の労働へ。
夜も同様に食事してから、就寝。

会話は基本的に食事中か労働中しか相手にしてくれない。
それ以外で話しかけても「後にしてくれ」とか「Zzz…」と寝ていたりで会話にならない。
ということは情報が得られない。

ブリティンにある「旅人の居酒屋」。よく見ないと分からないが、3名がテーブルについて食事中。立ち歩いているのは主人公の他、店のマスター、料理人、小間使いの少年である
夜が更けるとベッドに入って就寝してしまう

船は攻撃されたりすると老朽化して沈む。

海の孤島にあるバッカニアーズ・デンで敵に囲まれて船が沈んだときは、途方に暮れた。

食糧を買い置きしておかないと、体力が減って死ぬ。

ステータスにある「F」は持っている食糧の残り。Shipは船の耐久力

夜は真っ暗。たいまつで周辺が明るくなるが、決まった歩数で消える。

夜になると灯台が周囲を照らす。離れると真っ暗闇。

町や洞窟にある扉を開ける鍵も1つずつ購入(鍵を開ける魔法もあるが……)する。

魔法は材料を購入し、自分でブレンドして作る。

魔法を作る材料は「人参」「にんにく」「真珠」「灰」「苔」「ナイトシェード」「マンドレイク」の7種類。
売ってる場所によって値段が違うので、「人参はあの店が安かったな……」などと、生活感漂う思考をしながら世界を放浪することになる。
ブレンドを間違えたら当然魔法はできない。
洞窟内で材料がなくなると死ねる(というかほぼ死ぬ)。

その魔法自体も、スペルを覚えて入力しないと唱えられない。

解錠する呪文「In Ex Por」を詠唱中。コマンド選択ではなくキーボードで入力する

レベルアップの基準が明示されない。

敵を倒すと経験値が手に入るが、その値は見えない。
で、宿屋ではなくその辺で野宿すると、たまに「ロード・ブリティッシュの亡霊」が現れてレベルアップさせてくれる。

草原で野宿している。敵に寝込みを襲われ、目覚めることなくボコボコにされることも

しかし貧しい人にお金を恵んであげたり、冤罪の人を助けたりという「善行」を積まず、町の人を攻撃したり、城の宝箱を盗んだりといった「悪行」をしてると、この亡霊が出なくなったり、逆にレベルダウンさせられる(町の人々も怯えたりして会話が成立しなくなる)。
この善行と悪行の基準も、はっきりとは明示されない。
最初はどうすれば亡霊が現れるのかすら判らず、レベルアップするために全滅していた(全滅すると確実にブリティッシュの亡霊が現れるので)。

野宿するか全滅すると会える、ロード・ブリティッシュの亡霊

敵を倒すと、その場所から全員が脱出するまで戦闘が終わらない。

逃げる場合も全員が脱出しないと駄目。なので船上での戦闘などは、誰も脱出できないので逃げるの不可。洞窟内の岩場なんかで戦うと通路が狭いのでめちゃめちゃ面倒。

橋の上で戦闘。全員を1マスずつ移動させて画面外へ出せば脱出成功
海上での戦闘は船の中。パーティを画面外に出せないので勝つか全滅するかしかない

敵を倒すと宝箱が出る。ただしアイテムを1個ずつ取るので面倒。

ドラゴンなんて倒すと大量(武器だの道具だので20個くらい入ってるので、その場合20回Getを繰り返さないといけない)にアイテムを吐き出すので、5人パーティーなら4人を脱出させてから残り1人で宝箱を開けないと、コマンド入力だけでイライラが爆発する。
なので船上で宝箱が出たりすると、誰も画面外に出られないので最悪。

地下世界の存在。

このゲームの舞台は、主に地上と地下に分かれる。
地上はいいとして、地下に入るには世界に8つある洞窟の最深部まで行くか、滝つぼに落ちるか、たまに海上に出現する大渦に巻き込まれるか。

魔法の絨毯で飛ぶ主人公の右に、滝が見える

この滝と大渦が厄介で、まだゲームを始めたばかりの頃に間違えて地下に落ちると、まず脱出は不可能。
なぜなら普通は、地上から洞窟に入り、その地下8階まで下ってようやく地下に入る。
それをパスして来てしまった場合、脱出するには真っ暗闇の地下世界で何とかして洞窟につながる場所を発見し、そこから8階分上がらねばならない。
まあ、まず無理だ。

ルーン文字は、マニュアルに対照表があるので自分で翻訳して読む

この世界の文字は「ルーン文字」。ちなみに画像のものは “HEREUPON BEGAN THE QUEST OF HIS MAJESTY LORD BRITISH TO EXPLORD AND CHART THE NEW UNDERWORLD ON 11/27/137” と書かれている。
ロード・ブリティッシュたちが地下に入った際、記念に建てた看板のようだ。

地下世界の奥深くで発見した探検隊の墓場

地下世界の奥深くでは、探検隊の墓場を見つけた。
死体が転がっている。そこまでの道は一方通行で戻れない。それなのにこれ以上進むこともできない。初めて来た時は、まさしく絶望感に襲われた。
しかし注意深く動き回ると、必ず脱出の糸口が用意されている。

どうだ。嫌になってくるだろう。画面も地味だ。

でも、これがいいんです!(インドを誉めるアブドゥル風に)
だが……それがいい!(甲冑こわしちゃった爺様を誉める前田慶次風に)

門番の悪魔が出してくるクイズ。ヒントはない。