先月観たもの一気に

『ノーカントリー』
いろんなところで「悪役がすごい」っていうので観ました。確かにすごかった。
初登場でいきなりものすごい脱出してみせて、ヒッチハイクするシーンの不気味さがすごい。
こんな異常な雰囲気を出せる人はなかなかいない。
まず基本的に「でかい人」というのは、魅力と同時に恐怖の対象でもある。
笑ってても怖いし、怒ったらもちろん怖い。
むしろその恐ろしさが目を離せない魅力となって、こちらは引き込まれていく。
で、この悪役であるハビエル・バルデムの「でかさ」というのは、ただ体が大きいだけなのではなくて、まとった空気そのものがでかくて重い。画面に出てくるだけで「ドシンッ」という音がしそうなくらいに。
だからガソリンスタンドの親父に異常な絡み方をするような「いかにも」なシーンよりも、笑顔になっているシーンの方が相対的に恐ろしくて魅力的になる。
映画のエンディングは、観ているこちらが「えっ」と言ってしまう終わり方だが、こういう感じ、昔はよくあった気がする。
でも原題が「No Country for Old Men」なのだと知ると、ああなるほどねとも思える。
もしかしたら最近の映画でも実はこういうのはよくあるのかもしれないけれども、自分としては懐かしい感じがした。

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (108)
注)この映画はサスペンス、アクション映画ではありません
これは評価が難しい
一回目より二回目。見入ってしまった映画です。
一番退屈なおっさんが主役かよ
果たして?


『さくらん』
おいらんものの作品で、はたしてハッピーエンドというのはこの世に存在するのだろうか?
大金持ちに見受けされるか、もしくは好いた男に裏切られて、脱走しようとして折檻されて、もしくは遊郭ごと大炎上とか。
この作品もやっぱり同じ(炎上はしないけど)。
画面は一時停止するとどれも綺麗。でも動いてると駄目になる。これって映画としては致命的なのでは?
土屋アンナが跳び蹴りするシーンなんて、「はあ~」と特大のためいきをついてしまった。
もっと勢いよく蹴ってくださいよ。
間夫のところへ向かうけれども裏切られて……というシーン以降、映画の失速具合が急激になる。
ラスト30分はほんといらない。
『初恋の来た道』ラストの現代~回想シーンくらいいらない(この映画はラストのそこまでは神だったが)。
原作がどうなってるのか知らないので申し訳ないですが、さくっとカットしてもよかったのでは?
こんなこと言いたくないが、ああいう終わり方は10代なら感動したかもしれない。
しかし今となっては「なんでだよ」というため息しか出てこない。

角川エンタテインメント (93)
キャバクラ嬢風味の花魁物語
人生、それは他者との関係性の中で循環する時間
ひっでぇ
ガラッパチ花魁!
美しい


『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
面白かったです。
欲望の黒い炎が……とか、えぐいおっさん一代記とか言われているようですが、別にそんなことは感じなかった。
起業してのし上がっていく人って、みんなこんな感じでしょう。全然えぐくないよ。
善人でも悪人でもない、純然たる「創業者」。なので単に「おっさんの一代記」としてとっても面白かった。
ところでこの映画は、「ノーカントリー」と同じところでよかった。
何がいいと言って、「効果音」がいい。
見終わってから記憶に残ってるのは、道を歩く時や自動車が動き始めた時の「ジャリジャリッ」という小石を踏みしめる音や、部屋で物を動かした時の「カチャッ……スルッ」といった音。
これがすごく気持ちよくて、何度も聞いてしまった。

ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント (40)

ベンチャー精神
最初はしばらくの間、セリフもない場面が只管続くため、戸惑うかもしれません。
テーマは、理性 vs 悟性
現代アメリカへのアンチテーゼ


『君のためなら千回でも』
すごく嫌な映画。誰でも記憶の奥底に「子供時代の思い出したくない、思い出したら死にたくなるような恥ずかしい、情けない自分の言動」というものがあると思うが、この映画はそれを思い出させる。
主人公のアフガニスタンでの少年時代の行動は全くもって最低で、物語のヒーローとしてはこれほどどうしようもない奴もない。
この部分は非常に良かった。
ところが成長して現代視点になり、アメリカで暮らしてた主人公はもう一度アフガンに戻ることになる。
そしたらそこの孤児院にいたおっちゃんとちょっとしたぶつかりあいになるんだけれども、その言い分がトンチンカンで鼻白む思いになる。
しかもおまえ、あんだけ言いたいこと言ってごめんなさいも言えないのか。
それとハッサンへの友情は、あの救出劇で示したと言いたいのかもしれないが、なんだかハッサンがずっと変わらず抱き続けてきた「思い」がいまいち報われてない気がしてならない。
全体的には都合が良すぎるが、いい話だとは思う。
でもラストに「君のためなら、千回でも!」と主人公が叫んだとき、その背後でアメリカ人制作者たちが「これで感動間違いなしっしょ、げはは」って言ってる気がしてしまってどうにも駄目だった。
『スラムドッグ・ミリオネア』で、イギリス人監督が「雑で混乱して貧しくしときゃいいんじゃね? インドってこんな感じっしょ。げへへ」って言ってるみたいなイメージとかぶる。

角川エンタテインメント (8)
ハッサンの健気さ!
Excellent product, excellent service
贖罪とも呼べる行動で真の友情を描き、戦争という事実へ問題提起
是非観ていただきたい!
感慨深いです