世界一の四尺玉「片貝まつり」を観に行く

世界一の四尺玉「片貝まつり」を観に行く

「ハナビスト」として有名な冴木一馬氏に誘われ、新潟県片貝町の奉納煙火「片貝まつり」を取材してきました。
片貝祭りの花火といえば、なんといっても世界一大きい「四尺玉」の花火です。

どこにでもありそうで意外と全て揃うことが少ないのに、ここ片貝祭りだったら味わえるものがあります。それは、
◎神社
◎大規模な露店
◎打ち上げ花火
という組み合わせ。
人口4000人の町が、3日間だけ20万人もの観光客が訪れる大祭になる不思議な2日間(前夜祭を入れると3日間)。
また単なる花火大会ではなく、全ての花火が地元民の思いが込められた「奉納煙火」であるという人情味もすごくいいです。

祭りは夜だけではなく、昼間もいろいろやってまして、「玉送り」「みこしおどり」「民謡流し」「筒引き」「相撲大会」「真昼の三尺玉花火」などあるので、ぜひ昼間から楽しんでほしいです。

花火の打ち上げ場。関係者以外は立入禁止
昼間の桟敷席。夜は観客で満席に

◎前夜祭のスケジュール
15:30 伝統祭り屋台曳き廻し(一之町→二之町→三之町→四之町→高見→浅原神社前→ふるさと会館)
19:15 前夜祭民謡流し(一之町→に組総合センター→五之町)

祀り屋台引き回しのスタート地点。前を歩くのは冴木さん

◎初日
08:00〜15:00 筒引き(八島→一之町→浅原神社)※打ち上げ場に打ち上げ用の筒を運ぶ
18:50〜21:00 お囃子コンクール(片貝伝統のシャギリ 浅原神社相撲場)
19:15 奉納花火太鼓(桟敷お立ち台)
19:30 奉納大煙火スタート
20:05 明治11年以来の正二尺玉1発打ち上げ
20:15 正三尺玉打ち上げ
21:00 正三尺玉打ち上げ
21:15 正三尺玉打ち上げ
22:00 正四尺玉2発打ち上げ
22:20 奉納大煙火終了

四尺玉を装填。この場所には関係者の中でも本当に限られた人しか入れません
日が暮れて、いよいよ花火へ

片貝の花火は「花火大会」ではなく「奉納煙火」です。
本来は客を呼ぶためのものではなく、自分たちが楽しみ、自分たちで愛でるための花火というわけ。
旅行者はそこに参加させてもらう部外者でしかありません。
しかしお祭りとは本来、そういうものです。(もちろん排他的な雰囲気はありません

町民が花火に使うお金は生涯で平均200万円ともいわれます。
毎年、花火貯金をしてここぞという時に思いを込めた花火を打ち上げるんです。
子どもの頃から「屋台曳き廻し」「筒引き」といった神事に触れ、中学の卒業年度ごとの会に所属しています。
ですからみんな花火に思い入れがあります。
外に出て行った人も、祭りに合わせて家族を連れて帰り、友が集まる大イベントでもあります。

桟敷席が埋まり始める

打ち上げ花火はひとつひとつが奉納されたものですので、それぞれの打ち上げ前に奉納者のコメントがアナウンスされます。
「○○ちゃん、生まれてきてくれてありがとう」
「お父さん、これからももっと元気で」
「我が社のご愛顧に感謝して」

そんな風に家族一同、友人一同、会社一同、といった形で奉納されます。
「おじいちゃんの夢だった花火、ちゃんと打ち上げますからね。空の上から見守っていてね」
そんな少しホロリとさせられるものもありました。

かと思えば猫の顔のように広がる花火を「スターマイン」ならぬ「ニャンターマイン」と名付けて打ち上げる動物病院があったり、ハート型の花火を「ラブ♥ラブ♥ラブファイアー!」とコメントをつける人もいて、場内は大きな笑いに包まれます。
桟敷席でスペースに余裕があれば、ぜひ寝転がって花火を見てください。
まさに全天に広がる花火の大スペクタクル!

最近の花火大会では、高級感のあるクラシック音楽をバックにしたりして、厳粛な雰囲気を出そうとすることもあります。
しかも片貝の奉納煙火はそんなことはしません。
花火を打ち上げている間、玉送りの屋台がひっきりなしに打ち上げ場に入場し、最初から最後までお囃子を歌って大騒ぎしています。
そこに楽しいアナウンスが重なり、夜空を埋め尽くす大花火が連続して打ち上げられます。
普通の花火大会って「ちょっとショボイ花火」が打ち上げられ、中盤と最後に派手で大きい花火が打ち上げられると思います。
片貝は違います。
最初から最後まで派手な花火が打ち上がり、中盤と最後には片貝まつりを知らない人には「常軌を逸している」とも思える超巨大花火が打ち上がります。

いよいよクライマックス。「世界一の四尺玉」。

三尺玉、四尺玉を打ち上げる時刻になると、町にサイレンが鳴り響きます。
そして予定時刻ちょうどに、火の玉が山の向こうから天空へ。
観客からは一斉に期待を込めた歓声があがり、巨大な花火が目の前の空いっぱいにひろがりました。
その直後にドン!と足先まで震えるような音が追いかけてきます。そのあまりの音圧に、衣服がわずかに揺れるのを感じられたほどでした。

◎2日め
10:00 小学生鼓笛隊パレード(一之町→五之町)
10:30 古式玉送り(一之町観音寺出発)※花火玉を集めて打ち上げ場に運ぶ。この時に歌うのが「奉納木遣り」
12:00 相撲大会(浅原神社相撲場)
14:00 「日本唯一の真昼の三尺玉1発」打ち上げ
19:30 奉納大煙火スタート
21:00 正三尺玉打ち上げ
22:00 正四尺玉2発打ち上げ
22:20 奉納大煙火終了

これが珍しい「真昼の三尺玉」
お祭り関係者も一休み。

最後は名物へぎそばを食べて帰りました。