瑞浪超深地層研究所へ
地下500mの水
JR名古屋駅から北東に車で50分ほど。岐阜県瑞浪市の山あいに、日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所がある。原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋める「地層処分」を研究する施設だ。
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋める「地層処分」に向けた研究施設だ。地層処分は地下300mより深い地点と決まっている。そのため地下300mと500mの立坑が掘られ、そこから横方向に各100mほどの坑道が伸びている。
地元との協定で放射性物質の持ち込みはできない。主に岩盤の性質や地下水を研究している。
地下へはエレベーターで降りる。横穴はトンネル状になっていて高さ3m、床面の幅は約4m。地下世界は寒いのかと思いきや、地上よりもずっと暑い。地熱の影響だ。また湿度が90%近くあり、余計に暑く感じる。聞くと周囲の地盤は地下水に満たされており、湖の中にいるようなイメージだそうだ。水は圧力の低い場所に集まるから、穴を掘ると岩盤の見えない隙間から出てくる。その通り、露出した岩肌から水がしみ出していた。
おおまかに計算すると、地中の水は年1mほどしか移動しない。地下300mで湧き出る水は7~8km離れた山に10000年前に降った雨水らしい。さらに地下500mとなると、およそ20000年前とのこと。およそ地球史上最後の氷期だったウルム氷期の頃だ。
大学時代、「ウルム氷期の人類移動」に心を奪われ、ヘイエルダールの『海洋の人類史』などを読みながら心をときめかせていたことを思い出した。
さて、実際の地層処分計画では、使用済み核燃料の再処理過程で出る放射性廃液を溶けたガラスと混ぜて固めたガラス固化体(直径40cm、高さ1.3m)にする。これを1体ずつ厚さ20cmの鉄製容器に入れる。さらに厚さ70cmの粘土で包み、水が通りにくくする。地中は酸素がほとんどないことから、厳しめに計算して容器は1000年で3cmほど腐食するという。
同様の計画はフィンランドやスウェーデンですでに進められており、日本とは違って実際に処分場もつくられている。
日本には2014年4月現在で、25000本相当のガラス固化体にした使用済み核燃料がある。建設する地下施設は6〜10平方kmに40000本以上の埋設を念頭に入れて考えられている。科学的な視点だけでいえば、都市の地下でも問題ないとのことだった。
処分場「有望地」提示へ
最終処分場整備を進める原子力発電環境整備機構(NUMO)が、処分場建設の調査を受け入れる自治体の公募を始めたのは2002年12月。2014年までに約200億円を広報事業に費やしてきた。財源をたどると一般家庭からの電気料金になる。
2007年には高知県東洋町が応募したが、町を二分する大論争となり、同年の町長選で反対候補が当選。応募を取り下げた。以降、手を挙げた自治体はない。
福島第1原発の事故以降、原子炉の運転は原則40年となった。政府は2015年に最終処分の基本方針を改定した。現世代の責任として最終処分を先送りせず、最終処分場建設に本腰を入れている。
これまで公募だけだった処分地の選定方法を改め、科学的に適性が高い地域を「有望地」として提示し、関係する自治体に申し入れることになった。
科学的有望地とは、以下のようなことだ。
◎火山から15km以内、または活断層周辺を避ける
◎地温が高い軟弱な地盤や地下資源がある場所なども回避が好ましい。
◎輸送面を考慮し、沿岸部から20km以内が好ましい。
これらの計画は、候補地の決定から処分場の建設、ガラス固化体を搬入後に閉鎖するまで100年程度を見込む長期的なものだ。その後は人は「管理」せず、万年単位で地層に「隔離」するということだ。
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