美しくない美少女

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先日外出しての帰り道、以前電車で見かけた美少女がいた。
気持ち悪くなって顔をそむけた。
これじゃ何のことか分からないと思うが。
というのも先日、神戸方面から大阪方面に向かう電車に乗っていたんである。
自分が座ると、向かいに中学生と見える制服姿の女子学生が座っていたわけだ。数学か何かの教科書をひらいて読んでいる。
制服の作りの良さから、これは明らかに私立学校。
全体的に透き通るような印象をもった子であって、これはもう勝手に純真無垢、というイメージで見ざるをえない。
で、しばらくすると、その美少女がおもむろに鼻をほじり始めた。
それはもう堂々と、つつみ隠さず、豪快にである。
ぐいぐいと鼻の穴を押し上げて内壁から不純物を取り除こうとしている。
指を押し上げすぎて、鼻の穴が縦にひろがっちゃうぞと言うくらいぐいぐいと。
私は「えっ」と驚き、遠く離れているのに思わず後ずさりするように体を座席に押しつけた。
美少女はちょっとうつむいて、ほじった鼻くそを指の上でもてあそび、ぴん、と足下に落とす。それがよろしくない見た目であることなど、何ら気にする風がない。
これはつまり、私の見立てがある意味正しかったのだ。
つまり、純真無垢。
バカとかそういうことでなくて、まだ子供なのだろう。たぶん。
「美少女が電車で勉強しながら鼻をほじる」というちょっとお目にかかれない風景を、私は何とも言えない気分で眺めていたのだが、再び鼻くそを落下させる頃には、もう気持ち悪くなって顔をそむけていた。
「珍しいものを見た」から「見たくないものを見てしまった」という風に感情が変換されたわけだ。
それで、である。
ついこの間、朝から神戸の山手の方でとある試験を受けねばならんかった私は、11時頃には答案を提出し、山手を下って三宮駅から電車に乗った。
日曜日だから電車は混んでいない。
悠々と席に座ると、目の前にあの美少女が!
しかし私は顔をそむけて見ないようにしていた。
もはや彼女はただの美少女ではなかった。鼻くそをほじる美少女、でもない。
「鼻くそ」をほじる人がいて、よく見たら美少女のような気もするという存在になっていた。
生理的に気持ち悪かったんである。
鼻をほじるなと言うのではない。ひとりこっそりやってくれと言いたい。