星の王子さまの気づき

星の王子さまの気づき

『星の王子さまの気づき』(三和書籍)西村英希先生翻訳の新刊。
今年4月に活動の軸を日本へ移されたばかりというタイミングで、良い本が出されることになりました。

テグジュペリの『星の王子様』を読む中で気づく、普遍的な心の問題、生き方の問題についてを平易な語り口で読み解き、読者自身のそれぞれに置き換えて考える道を示してくれる本です。

たとえば王子とバラについて。
地球で五千本のバラを見てしまった後の王子の視点を語る人は多いですが、元いた星に残された一本のバラの主体性について語る視点はなかなか見かけません。

まず本書は王子とバラの恋を通し、初めてだからこそ心を揺り動かされ、全身全霊で愛することができた。
しかし同時に初めてだからこそ、その一途な思いで身動きが取れなくなり、途方に暮れた。
そんな初恋の痛みを丁寧に言語化していきます。

僕は日頃、学生・生徒たちにそれぞれの思い出話をにするとき、よく「何かを得た話ではなく、何かを失った話を書くといいよ」と言います。
傷つき、つまづき、転んだ経験こそが年を取った人間が若かった頃を振り返るとき、あふればかりの輝きを放つ人生の転換点であったことに気づくからです。

『星の王子さま』では王子が去った後、あのバラはどんな過酷な運命にさらされただろうか、と思っていました。
しかし本書は「あなたはあのバラを弱者だと思い込んでいないか?」と問いかけます。
これはハッとさせられました。

本書から外れますが、映画『ローマの休日』で、アン王女はジョー・ブラドレーに身をささげました。
そしてそのまま共に駆け落ちする選択肢があったにもかかわらず、自由のない元の世界へ自らの意志で帰っていきます。
それは願いの壁で庶民の思いを知り、王族としての義務に気づいたからです。

ジョーとのたった一日の初恋を通じ、それを捨てようと決断して大人になったからこそ、ジョーの言う「ままならないのが人生だ。そうだろ?」という言葉通りにままならぬ人生を受け入れ、彼女は自由と引き換えに「心の自立」を果たすのです。

本書でもまた、読み解かれるのは「王子が離れたからこそ、バラの人生はバラのものとなったのではないか?」という問いです。

この一連の流れは、特に本書を読んで良かったなと思えたのでした。