インセプション

インセプション

大阪梅田のブルク7で、先行上映のレイトショーがあったので、観てきました。

そのまえに1時間ほど持ち重なりしまして、近くの喫茶店に入ったんですが。
左隣に座ったのが40代男×1+10代女×2。
右隣が50代男×2。

左から聞こえてくる会話が、
「俺、今までやった女、ぜんぶ動画とってあんねやけどさあー」「えーキモーイ」
といった感じで、笑えもしない、単なるきついシモ話が延々と続く。大体どういう関係なんだよ、おまえら。

右からは、
「こないだ阪急電車で、ヤンキーの兄ちゃん3人が、いきなり目の前にいたカップルを『むかつくんじゃー』ゆうて殴りだしてやあ、女の子もう鼻血でとるんや。そやのに車掌もビビッて出てこおへんねや。ははは」
こんなのが左右からステレオで聞こえてくる。

大阪……おそろしすぎる……。
大阪にはヤクザと吉本と○○しかいないなどとよく言いますが、あれはウソです。
ヤクザしかいません。常在戦場の暴力都市です。

で、映画。
2008年ではかなり面白かった『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督作品。
上映時間中、ずっと「ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」と重低音鳴らしっぱなしの演出は健在です。
(音楽も同じハンス・ツィマー)

主人公のドム・コブは、人の夢(潜在意識)に入り込むことでアイディアを”盗み取る”特殊な企業スパイ。コブは昔、最愛の妻モルと夢の中へ幾度となくダイブし、潜在意識の深い階層で妻と二人きりの時間を楽しんで暮らしていたが、やがて現実と夢の判別がつかなくなったモルは自殺し、さらにコブは妻殺害の容疑をかけられ、今では家に2人の子供を残しての逃亡生活を余儀なくされていた。
そんな彼に、強大な権力を持つ大企業のトップのサイトーが仕事を依頼してきた。依頼内容はライバル会社の解体と、それを社長の息子ロバートにさせるようアイディアを”植えつける(インセプション)”ことだった。困難かつ危険な内容に一度は断るものの、妻殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいるコブは、犯罪歴の抹消を条件に仕事を引き受けた。
夢の世界を構築する「設計士」のアリアドネ、他人になりすましターゲットの思考を誘導する「偽装士」のイームス、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合士」のユスフをメンバーに加えた6人で作戦を決行。

Wikipedia

映画は2時間30分以上あり、かなり長いです。
でも(私は)全く気にならないくらい面白かった。
話がややこしいので、体調のいい時に観るのがおすすめ。
(細かい部分を見逃すと、「話が全然わからず面白くなかった派」と「複雑だったけど面白かった派」に分かれます。たぶん)

(L-r) LEONARDO DiCAPRIO as Cobb and ELLEN PAGE as Ariadne in Warner Bros. Pictures’ and Legendary Pictures’ sci-fi action film “INCEPTION,” a Warner Bros. Pictures release.

基本的に舞台は夢の中ですので、なんでもありの映像演出が楽しいです。
↑は、街が奥の方からめくれあがってきてるところ(2つ折りになります)。

↑飛行機の機内に戻るため、バンが橋から落下し、そのせいでひっくりかえったホテルの528号室で宙ぶらりんの仲間(雪山で戦闘中)を全員爆殺すべく、警備と格闘するアーサー。
↑何言ってんのかわからないと思いますが、本当にそういう話です。

日本人としては、やはり渡辺謙が出てることが気になるでしょう。
今回、渡辺さんは「一応出演してた」とか「後半は全く出ないよ」とかではなく、超重要な役です。
最初から最後まで出ます。
映画は「始まっていきなりワタナベ」状態であり、日本語セリフからスタートするので、一瞬「間違えて吹き替え版の上映に来ちゃった?!」と焦ります。

ヘリコプターで東京タワー上空を眺めて新幹線で京都に向かうという、嬉しい人には嬉しいであろう部分もあります。

また映画では、「具体的にどうやって他人の夢にダイブして共有するのか」という説明は一切ありません。
ジュラルミンケース開いて変な機械のボタンをブシュッて押したら、準備OK。
「ダイブできたらおもしれーだろ」という所から始まってる話なので、「じゃあどうやってダイブする?」なんて無粋なことは考えないという潔さ。
それでいて「ダークナイト」で超成功しちゃってるんで、予算を青天井で使えました思いきりやらせてもらいましたありがとうございました、という感じ。

夢の中での活動については、かなり細かくルール設定されています。
確かにそういう部分はちゃんとしとかないと面白くない。
たぶん頭が良くて才能のある人たちが集まって脚本を作ったんだろうなという感じ。
ただそうした脚本集団(クレジットはクリストファー・ノーランが脚本・監督だが、おそらく複数人で推敲して組み上げてる)の人たちは、おそらく途中から「作家というよりパズラー」状態だったろうとも思います。
ご苦労がしのばれます。

日本映画の惨憺たる状況を思うと、やはり「儲かる→人材が集まる→より面白くなる→儲かる」というスパイラルがあるんでしょう。日本は逆。

ただオチは「逃げた」と思います。
結局ああすることで、思いも寄らなかったシナリオの矛盾を攻められてもいいようにしやがった、と思いました。
気にしなくていいのに。面白かったから。ノーランは真面目だな。

というわけで「インセプション」、面白かったです。

ただしもう一度言いますが、疲れてない、体調のいい時に観てください。
作中、何度か「夢に囚われてはいけない」という台詞があります。
ところが私の隣に座ってたおっさんは、完全に夢に囚われてました。
寝るといびきをかくので、連れの女性に起こされる→起きる→寝る→起こされる、を2時間30分やり続け、「夢と現実がぐちゃぐちゃになる物語」を「夢と現実がぐちゃぐちゃの状態で観賞する」という、ある意味ぜいたくなおっさんでした。