映画『スティーブ・ジョブズ』感想
登場人物全員が切れ目なく、めちゃくちゃにしゃべりまくるのが『ソーシャル・ネットワーク』っぽいな、IT企業をめぐる群像劇って自然にこうなるのかなと思っていたら、脚本がどちらもアーロン・ソーキンだった。
で、監督はあちらがデビッド・フィンチャー、こちらはダニー・ボイル。
ダニー・ボイルは過去『スラムドッグ・ミリオネア』や『トレインスポッティング』の監督で、僕はこの人を「ハッタリ野郎」だと思ってきた。しかし本作はその作風が良い方向に影響している。
そもそも、ジョブズが変人のダメ野郎だけど、でも誰も見ていない未来が見えていて、他人を一切顧みない狂気がちゃんと未来への道筋を探り当てていたという点を多くの人が知っている(少なくとも本作の観客はそうだろう)。
そこにダニー・ボイルの「良くも悪くもハッタリなセンス」が見事にマッチしている。
これまでのテレビドラマ『バトル・オブ・シリコンバレー』やアシュトン・カッチャー版の『スティーブ・ジョブズ』だと正当派の人物伝であったがために、「ジョブズだって悩んでたと思うよ。そんなに悪い奴じゃないよ」という描き方になっていた。
しかし本作は、Macintosh、NeXTcube、iMacのそれぞれの発表会直前40分を3回繰り返すことで2時間映画の完成、という前代未聞の三幕構成になっているため、最初から「これ、あくまでも『ワシらの妄想』やで」と割り切ってある。
毎度、大切な発表直前にいろんな奴が来てあんなに罵りあう大混乱になってたわけがない(笑)。
しかし、だからこそ、ジョブズのドス黒い部分(認知拒否やスカリーへの策謀、マスコミ操作など)をバッチリ描ける。
と言いながらも、最後のジョブズとその娘リサのやりとりには、きっちり温かい気持ちになって感動させられました。
ああ、そうくるのかって。傑作でした。
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