和歌山信愛中高へ行く

和歌山信愛中高へ行く

和歌山信愛中高をお伺いし、森田登志子校長先生にインタビューさせてもらった。
和歌山信愛は明治の黎明期である1877年、フランスの「ショファイユの幼きイエズス修道会」から日本に派遣された4人の修道女の宣教活動、とりわけ身寄りのない子どもや青少年に対する教育活動を源流としている。
「信愛」は現在、全国に4つの中学・高校があり、和歌山信愛は1946年に桜映女学校として開校した。
名称変更を経て1955年から現在の姿となっている。以来、和歌山県下唯一の女子カトリック・ミッションスクールとなっている。

森田先生のお話で特に興味深かったのは、男子と女子の違いについてだ。
一般的に「女子は数学や物理が苦手」と言われる。しかしそれは、教科書などにおける理系言語が男子向けになっているからだという。
具体的な事象から話を進めれば、実は「女子は数学や物理が苦手ということはない」と分かるそうだ。
実際のところ、たとえば和歌山信愛の科学部は、2mのハイブリッドロケットを自作し、精密な重心安定化や燃焼実験を経て6年連続で打ち上げに成功している。
また和歌山大学の協力を得て「はやぶさ2」の軌道解析を行い、成果を天文学会で発表などもしている。

生徒の自作ロケット

またもうひとつ、同じく女子教育のノウハウを蓄積しているからこその知見があった。
それは高3の秋くらいまで優秀だった女子が、そこから点数を下げてしまうという現象について。
このことは、逆に他校の男子を見たとき、秋まで低空飛行だった男子が入試直前になって急上昇するという現象とセットで考えなくてはならない。
和歌山信愛でもこの現象は古くから見られ、どう対策すればいいかが分からなかったという。
長い時間をかけて得た解答は、下がる前に、先生が支えて戻すということ。
先生が生徒に正しく寄り添えば、成績の上昇は維持できる。
つまり男子と女子では、先生に求める距離感が違うということだ。

 信愛では、先生と生徒をランナーとコーチの関係になぞらえています。適切な授業、きめ細かな小テスト、それに対するフォローの繰り返しでペースを作ります。適切なペースメーカーは、より質の高い能力を引き出すでしょう。女子教育では、この二人三脚が欠かせません。

(森田先生のお話より——『ネクスト私学2』に収録)

この方法論だと、物理的に教員のマンパワーを必要とする。
そこで和歌山信愛では、2017年現在で約1500名の生徒に対し、教員が100名以上いる。しかも8割が専任教員だ。非常勤ではないということはつまり、授業がなくても学校にいるという意味だ。
職員室は教科ごとに色分けされた座席表があり、生徒は分からないことがあれば該当する教科の先生にいつでも質問できるようになっている。

まわりに装飾もなくポンと置かれてある

また実際に学校を訪問して感じたことは、とんでもなく「綺麗」なことだった。
和歌山信愛では、六時限が終了すると全校一斉に清掃が始まる。生徒は制服としてのエプロンを着用し、全員で掃除を開始する。
そのおかげなのだろう、新しいとか豪華とかでなく、整理整頓が行き届いて校内の空気が「清浄」に満ちていた。
またあらゆるところでミニマリズムが具現化されているように感じた。校内を歩くだけの気持ちが澄んでくるような、素晴らしい体験をさせてもらった。