好きな歴史系漫画

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最近、歴史ものとして書かれた漫画のレベルがもりもり高くなってきてると思いませんか。
史実と創作がわやくちゃにならないように、膨大な情報をうまく消化している作品が多いと思います。
編集者個人がよほどの好き者なのか。歴史やってる大学院生あたりが動員されているのか。
それともそういうのを調査する専門集団でもいるのか?
私個人としては、高嶋さんの資料調べは全般的にやらせてもらってますが、『乱神』のときは鎌倉時代日本の元寇と、西洋ヨーロッパの十字軍を合体させる必要がありました。
彼我の装備にともなう戦闘力の差や、当時の生活習慣など、なにぶん素人なもので調べていて頭が割れるかと思いました。


『ヴォルフスムント』
狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)
オーストリア帝国の国境にある関所が舞台。1巻の1話めで、いきなり予想を裏切る展開。
どんどん嫌な気分にさせられ、帝国への怒りや憎しみが積もり積もっていく。
つまりは、ヤクザ映画でカチコミに行くまでの高倉健のような気分になってくるわけだ。
21世紀に転生した「カムイ外伝」みたいな感じで、ひどいんだけど展開が気になる。
『ヴィンラント・サガ』
ヴィンランド・サガ(1) (少年マガジンコミックス)
これはすごい。何がすごいって、主人公サイドであるバイキングのひどさをきちんと描いている。
それでいて、あの弱々しいクヌート王子が後にイングランド、デンマーク、ノルウェーを統一する北海の帝王になるってか?という王道の少年漫画的ロマンもある。
また人物の中に善悪があって、その時の状況にもてあそばれて苦悩しなければならない姿も描かれる。
どこぞで売れまくりの海賊漫画とは違う。
人殺しも略奪もしない海の民って、それおまえ、ただの漁師じゃねーかっていう。
『ヒストリエ』
ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)
紀元前4世紀の古代オリエント。主人公のエウネメスはいわゆる「カルディアのエウネメス」。
6巻あたりからアレクサンドロス大王(アレキサンダー3世)麾下の書記官となり、さらに大王死後はディアドコイ戦争のプレイヤーとなる人です。
これについては、以前書きました。
■以下、スタンダードですが。
『あさきゆめみし』
あさきゆめみし―源氏物語 (1) (講談社コミックスミミ (960巻))
時間のない受験生が「源氏物語」を知りたければこれを読め、といわれる名作。
宇治十帖あたりはかなり省略されてるが、一般教養としてそこまで求められる場面はまずない。
『日出処の天子』
日出処の天子 (第1巻) (白泉社文庫)
いろんな意味でギリギリの聖徳太子。
でも、もし本当に聖徳太子が実在したとするなら、これくらいの人物だったらいいなーと思える魅力がある。
■前半はめちゃくちゃいいんだけどなー、という作品
『蒼天航路』
蒼天航路(1) (モーニングKC (434))
三国志でいう「魏」の創始者である曹操が主人公。
三国志演義じゃなくて、正史の方の三国志をベースにしつつ創作や俗説をうまくちりばめてある。
で、幼少時から常人離れした曹操がのしあがっていき、誰も実行できなかったような国家経営や軍事指導を行っていく。
その辺は最高に面白い。
織田信長が人気あるのも、こういう「前半部分」で人生が終わっちゃったからかも。
でもだんだん情勢が落ち着いてくると曹操があまりに超人すぎるのが災いしてか、後半はハイテンションなんだか解脱してんだかよく分からなくなり、官途の戦い終了あたりから徐々に読まなくなった。
『センゴク』
センゴク(1) (ヤングマガジンコミックス)
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えた武将・仙石権兵衛秀久を主人公に戦国時代を描いた作品。
金ヶ崎撤退戦や比叡山焼き討ちは最高に盛り上がる。車懸りなんてハハハハこやつめと笑いながら楽しめる。
これも前半はセンゴクゴンベエ自身がちゃんと物語に絡んでて、史実と創作を強引に娯楽作品として昇華してたと思うが、だんだん信長や秀吉といった上層部の話になってしまい、よくわからんおっさん日本史になりつつある。
たぶんその辺をどうにかすべく外伝(桶狭間戦記)も書いたんだろうが、それでゴンベエが活躍できるわけでなし。
『花の慶次』
花の慶次―雲のかなたに (第1巻) (Tokuma comics)
これは最初から最後まで面白い。
ただ原作(一夢庵風流記)を先に読んでたので、後半の沖縄編でかなりびっくりした、というだけ(原作は沖縄じゃなくて朝鮮半島に行く)。
原作にはない原哲夫個人による味付けが実に男の心をくすぐるというか、寺沢武一の描くコブラさんと一緒で、主人公があまりにかっこよすぎて笑えてくるという。
何事も過ぎたるは及ばざるがごとしとはいうが、あまりに過ぎたるものは神になるわけだ。