白洲次郎・正子の食卓
『白洲次郎・正子の食卓』(牧山桂子)
まず最初に言っておくと、白洲正子さんは料理しません。もちろん次郎さんもしない。
著者の牧山さんはおふたりの娘さんです。
で、誰の食卓なんだというと、要は「両親ふたりにおねだりされて、いつも娘が作っていた料理の本」です。
料理本としてはスタンダードな内容で、良くも悪くも「普通」です。
ただ、この本の面白さは、桂子さんが両親に対して愚痴りまくるところにあります。
愚痴と言うとおおげさかもしれませんが、両親を良く言おう、良く見せようという意識はないようです。
そのいちいちにユーモアがあって良いのです。
自分の母(白洲正子)に対し、「ああはなりたくないという思い」で料理をするようになったとか、母はちらし寿司をすぐにできるものと思い込んでいるとか。
正子さんは夫を「イギリスかぶれ」と言い、次郎さんは妻を「芋ばっか食いやがって(鹿児島出身だから)」と言うとか。
次郎さんが奥さんから「カニ買ってこい」と命じられ、ワタリガニ買ってきて罵倒される話とか、「人様に言えない理由で豆腐が嫌い」だという話とか、とりすましもせず無邪気で、非常に本当の意味で不自由のない家庭だったんだなという感じがいいです。
あと、「しらす」と太めのひらがなをくり抜いた、次郎さんお手製のカウンターワゴンがいい感じでした。
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