映画『やわらかい手』
正直言って「なんだこれ?」というのが感想です。
他の人はどう思ったのかなと思って検索したら、絶賛の嵐。
しかし主演女優のマリアンヌ・フェイスフルについてのお褒めが多く、映画自体の評価にバイアスがかかっているような気がしました。
若い頃のマリアンヌさん
http://www.cinemacafe.net/news/cgi/release/2007/12/2956/
例えて言うなら、私の嫁は福満しげゆきを「面白くない」と言うんですけれども、私が「いや、これは過去の状況から脱し、徐々に豊かになっているという作者の様そのものを楽しむのであって」と擁護してしまうのと似ているのかもしれません。
しかし小説や映画というのは、全員が全員ほめたりけなしたりするものでもないので、世の中には『やわらかい手』を観て「なんだこれ?」と言う人もいるわけです。
ご了承ください。
いや、お話自体はすごく面白いんですよ。
ところが演出が、斜に構えた学生の自主映画みたいだなと思ってしまいました。
・クラシックギター1本でかなでる悲しげな旋律
・音の少ない画面
・理解できなくはないが唐突な展開
:息子の激怒(風俗店で性労働をしている現場にでくわしたならともかく、完全におばちゃんスタイルの母親が店内を歩いただけで、あんなに泣いて怒るか? そもそも超絶テクに行列を作るのは結構だが、その横をあのおばちゃんが扉開けて入っていって、それで男たちは問題ないのか?)など。
こうした問題は配給業者も理解してるんだな、と予告編を観れば納得できます。
だって予告編はすごく明るく作ってあるんですよ。
BGMも「こんなの本編にあったっけ?」という軽快さ。
リズムのいい、苦みを含んだ大人のコメディなのかと思って本編を観ると、微妙に雰囲気が違いました。
この『やわらかい手』は、泣き笑いというか、本当は悲しいものを抱えているんだけど、でも笑っちゃうねという内容だと思います。
悲しいものを悲しく撮っても、つまらないものにしかなりません。
ところがこの映画は「ほ~ら人生の悲喜劇だろ、悲しいだろ、重々しいだろ」と言ってくる感じがして、嫌なんです。
漫才師が漫才やってて、たまにならいいけど、ずっと自分のネタに笑ってたらむかつくでしょう。
真剣な顔でバカをやるから笑えるんです。
かといって暗すぎるのも素人芸というやつで、いけません。
つまりですね、意味ありげに暗く作るのは簡単だと思うんです。
そのバランスを取るのが職人というものです。
要は私の好みに合わず、惜しい映画だと思いました。