ヤクザとアジアと森薫

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まずは散髪に行ったら、隣がヤクザだったという話。
いつも行ってる安い大衆理容(美容院に行くようなおしゃれ心は、とうの昔に失ってしまった)に行くと、外から見えてる待合室に数人座ってました。
あ、並んでるな、と思いながら店に入ると、すぐに「どうぞ」と案内される。
あれおかしいな、と思って待合室を通りすぎつつチラ見すると、その数人というのが尋常でない。
・五分刈りで紫のダブルのスーツを着て、がっちりした体格のチンピラA
・同じく五分刈りで青いダブルのスーツを着ているが、少し若くて細いチンピラB
・茶髪で派手なお姉ちゃん
こういう組み合わせは見たことがなかった。
変な連中だなと思いながら散髪スタート。
すると私の隣で頭を刈られているおっさんが、突然「ヨーコ! ヨーコ!」と叫び出す。
茶髪の姉ちゃんが足をふらつかせながら「なーにー?」と待合室からやってくる。
おっさんは、姉ちゃんを呼び寄せて何か耳打ちしとる。
そんで姉ちゃんは「わかったー」とだらだら答えて出て行きました。
しばらくして待合室から携帯電話の呼び出し音。
隣のおっさんは寝そべった状態で、顔を剃られてます。
するとチンピラBがケータイもってやってきて、「渡辺のオヤジさんです」。
剃っていた理容師の方はびくっとして、ささっと横に逃げます。で、おっさん、「おう」と答えて起き上がりました。
「今日は何時でしたかいな? ええ、親分にはもう言うてますんで。はいはい。五時半で」。
いくらなんでもこんなにわかりやすい関西ヤクザというのは、なかなかお目にかかれるものではない。
親分という単語をライブで聞いたのは初体験。
一瞬、「もしかして、『ミナミの帝王』の撮影でもしとるのか?」と思って鏡に映る周囲を見渡したくらい。
その後、おっさんはもう一回ケータイで話してたんだけど、電波が悪いみたいで髪切る時にかぶせられるビニールのフード(?)をつけたまんま、タッタッタと店外に出て行ってました。
汚いスナフキンみたいだった。
まあ、オチがあるわけでもないので。そういう感じだったという話です。
新大阪で、津島佑子さんに1時間半ほどインタビューさせてもらいました。
本来の目的とは関係のない中央アジア話でもりあがってしまって(バイカル湖畔のツングースとかテュルクとか昔の突厥とか)、時間ぎりぎりになるまで拘束してしまいすみませんでした。
エフタルとか天山ウイグルとかカラキタイとか聞くと心がときめく私ですが、どうも根源的な恐怖も抱くというのがあの中央アジアという地域です。
元来方向オンチである私は、「どんなに迷ったとしても、数時間ほど進みに進めばいずれ海につく」という日本人的思考を安心感の根拠としているため、大陸というのはどうも怖い。
数年前ニューヨークに行った際も、飛行機からアメリカ陸地を東西に横切る様を眺めてどうしようもなく不安になっていました。
数時間どころか数日たっても海につきそうにないところは恐ろしいわけです。
いや、待てよ。ハワイに行った時も、とてつもなく広い海にぽつんと浮かぶ小さな島ということで、そこにいるだけでいてもたってもいられない恐怖を感じたんだった。
ハワイであれだから、日本語がメジャーでないミクロネシアの方に行ったら失禁するかもしれない。
パプア・ニューギニアなんてたぶん実際行ってみたら普通だと思うが、慣れない気候、奇っ怪な植物、名伏し難い習俗が満載みたいなイメージがある。
ということは海だわ大陸だわで、オーストラリアなんて恐怖の暗黒島だな。
見た目も鬼ヶ島っぽいし。
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まあ、何の話だかわからなくなってきたが、「なんかこわい」というのは、「嫌い」というのとは違うんですよ。
ああこわい、でも見てみたい。でもこわい。ちょっとだけなら。あーやっぱり怖い。でも……みたいな、うざったいアンビバレンツがあるってことです。
中央アジアといえば、ここ最近私はマンガを買うということがとんと無くなってしまい、コミックスといえば「闇金ウシジマくん」と「ヒストリエ」(1年に1冊出るか出ないかのペースだが)くらいしか買っていません。
2010年の初コミックスは、全く完全なる、純然たる表紙買いとなる「乙嫁語り」でした。
森薫の新刊で、2009年10月に出てたみたいです。

森 薫 (41)
5驚きの連続
5続きが気になる!
5なんと言っても絵!
5作者の技量と、溢れ出る愛と情熱が凄い
5思わず引き込まれました。

実は大昔、とある人に「『エマ』ってどこが面白いんだ?」と言ってショックを与えたことがあったんだが、それはアニメで一回見かけただけの状態で、しかもその回はちっとも話が進まない回だったためにそういうことになったわけだ。
ところがその後、私は『エマ』にドはまりで全巻読みました。資料集も買ってます。すみません。
乙嫁語りについても、買ってよかった、読んで良かった、明日も読もうというわけで大変リーズナブルな本です。
『乙嫁語り』で舞台になってる19世紀のあのあたりというのは、実はカラー写真が残っています。
日本でいうと江戸~明治という時代になぜカラー写真が?!と驚くが、残ってるんだからしょうがない。
Sergei Mikhailovich Prokudin-Gorskiiという方が撮影したもので、実に綺麗なカラー写真です。
一番びっくりなのは、ブハラ・ハンの写真ですかね。
The Empire That Was Russia : Ethnic Diversity
好きな人が多いのに題材になったことが少ない、というジャンルは狙い目だと思います。
モンゴル帝国の西方面とか、アメリカ開拓時代の南米とか。
19世紀末の植民地なんて、どこを取り上げてもたぶん面白いと思いますよ。
グラン・コロンビアとか東南アジアとか。
中央アフリカのオムカマなんてどうですかね。キェバンベ4世あたりだと悪いイギリス人も出せるし。